働く人の悩みの9割は人間関係 ~過重労働よりも深刻な職場の問題~

働く人の悩みの9割は人間関係

悩みの9割は人間関係

 私は、企業内での職員対象の個別カウンセングをしており、現場の皆様のお悩みを直接聞かせていただいています。最初の訴えは、「仕事が合わない」「体調が悪い」「気持ちが落ち込む」「やる気が起こらない」「忙しすぎて限界だ」など様々ですが、よくよくお話を伺うと、9割以上が人間関係の問題に行きつきます。
「上司とうまくいかない」「部下が思うように動いてくれない」「顧客トラブルを抱えている」さらには「家庭不和」のケースもあります。
人間関係でうまくいっていない原因があって、心身に不調を与えているわけです。これは、厚生労働省のデータからも明らかで、「働く人がストレスや不安を何に対して感じているか」を取りまとめた調査では、毎回、必ずトップに人間関係が浮上します。そのあとに、「仕事の量」や「仕事の質」と続くのですが、じつは、物理的な問題と思われがちなこれらも、人間関係に深くかかわっていることが多いのです。きちんと連携が取れていて、サポート体制が整えば「仕事の量」も軽減できますし、わかり易いように指導や、補助があれば「仕事の質」を向上させることも可能です。

ですから、多くの問題は、人間関係で改善できるともいえるのです。

また、何か問題が起こっても、それをフォローやサポートしてくれる人がいれば、心の負荷が全然違います。いかに人間関係を築けば、より良い人生を送れるのか、その方法を知って実践していただきたいと思います。

自分の居場所があること

 人間関係が生活全般の質や心の安定に及ぼす影響力は、職場に限らず、家庭や地域、友人関係と多岐に及びます。良い人間関係を築くということは、自分の居場所を確保することとも言えます。心のよりどころともいえるでしょうか。居場所があることは、安心に繋がり、余裕が生まれます。
そして、心地の良い居場所を創るためには、人との関わり方を身につけなければなりません。

 最近は、メールやSNSでやり取りが増え、相手と直接会って話す機会が減少しています。ですから、リアルな場面で瞬間的に感情に対処する経験を著しく欠くようになってしまいました。相手の気持ちを理解したり、どのようにすれば相手とうまくつき合えるか、そのトレーニングの機会を少なくしたともいえます。コミュニケーションは、もって生まれた素質ではなく、トレーニングによって誰でも身に付けられるものです。

ですから、機会が少なければ、なかなか身につかないということになってしまいます。
人との関係性がうまく行かない人は、その機会が少なく、方法を知らないだけともいえるのです。

コミュニケーションスキルの基本とは

 人間関係は複雑であり、お互いの気持ちも常に変化しています。それに対応するためには、ちょっとしたスキルが必要です。
 私が担当しているある企業では、全職員向けのコミュニケーション研修を導入したところ、人事が介入するメンタル不全者が2年間で82%も減少、3年目には、100%減(不全者ゼロ)に達した実例があります。人との関わり方次第で環境の質が大きく変わった例です。具体的には、気持ちを受け止める聴き方、行き違いのない伝え方、ストレスマネジメント、ハラスメントの基本を一方通行の講義ではなく、ワークをふまえた体験形式で実施しました。

これにより、より良い信頼関係を築く方法を身に付け、指示の出し方、連絡や報告の方法がより明確になり、行き違いを最小限に抑えることができるようになったのです。とはいえ、さまざまなタイプの人がいて一筋縄ではいきません。

拙著『「かまってちゃん社員」の上手なかまい方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)では、さまざまなタイプの扱いにくい人とどうつき合っていけばいいか、こちらもぜひとも参考にしていただきたいと思いますが、このコラムでは扱いにくい人にとどまらず、身近な人間関係にもすぐに役立ち、関係改善に効果があるポイントについても触れていきたいと考えています。

身近な人との関係性がより良く変わっていくと、自分自身のモチベーションが上がり、気持ちも安定していきます。公私ともに、活き活きと過ごせる毎日を手に入れるお手伝いができたら嬉しいです。

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